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吉田鉄郎のドキュメンタリー

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昨日、田町の建築会館ホールで「日本における近代建築の原点~吉田鉄郎の作品を通して~」というシンポジウムがあり、会社帰りに寄ってきました。
http://news-sv.aij.or.jp/jnetwork/scripts/view30.asp?sc_id=2007

現在、東京中央郵便局(昭和6年築)と大阪中央郵便局(昭和14年築)の両局が、建て替え・解体の危機にあります。この両局を設計したのが、逓信省営繕課の吉田鉄郎でした。

昨日のシンポジウムでは、まず第一部として、富山テレビが制作したドキュメンタリー「平凡なるもの~建築家 吉田鉄郎物語~」が上映されました。
http://www.bbt.co.jp/bspe/index336.html

この作品は、東京中央郵便局、大阪中央郵便局の建て替えの情報を契機に、吉田鉄郎の出身地である富山のローカル局のディレクター東亜希子氏が、吉田鉄郎の生い立ちと作品に込めた思いを、冷静に丁寧にまとめたものでした。ナレーションは女優の中島朋子、ドイツやスウェーデンのロケまであり、地方局がよくここまで取材できたものだと思います。本気度が違います。

この作品は、今年の5月19日に地元の富山だけで放送されたとのことでしたが、それだけでは惜しい、上質な作品でした。今回の上映会などのように各地で上映の機会を持つべきだし、おそらく、いずれ全国ネットで放送される作品だろうと小生は期待しています。富山テレビのネット局であるフジテレビに放映を要望すれば、全国放送への一助になるかも知れません。

休憩をはさんで第二部では、時間が押してしまってほんの短い時間でしたが、東大の鈴木博之先生、日大の田所辰之助先生、建築家の兼松紘一郎氏、「東京中央郵便局を重要文化財にする会」の多児貞子氏、そして富山テレビディレクターの東亜希子氏のお話を聞くことができました。

今、東京駅前に立つと、まるで四角いケーキに羊羹を突き立てたような、あるいは地面に置いたナットに頭の付いていない太いボルトを挿したような、そんなバランスの悪いビルがあちこちに建つ「異様」で「奇妙」な光景が広がります。東京中央郵便局も、同じような形で建て替えるという計画が発表されました。これ以上、こんな形での建て替え物件を増やしてはいけないと思います。できれば、今のままの形での保存が良いのですが……。ちなみに、東京駅は、昔の姿に復元工事が始まったところです。

吉田鉄郎が設計した、現存するおもな物件は下記の通り(ウィキペディアより)。いずれも、地域の人々に愛され、多くは文化財として大切に保存されています。

・京都中央電話局上京分局(現・カーニバルタイムズ) (大正13年築) 京都市登録有形文化財
・京都中央電話局(現・新風館) (大正15年築) 京都市登録有形文化財
・検見川無線送信所 (大正15年築)
・別府市公会堂(現・別府市中央公民館) (昭和3年築)
・別府郵便局電話事務室(現・別府市児童館) (昭和3年築) 国登録有形文化財
・馬場邸(現・最高裁判所長官公邸) (昭和3年築)
・東京中央郵便局 (昭和6年築)
・馬場烏山別邸(現・第一生命グラウンド光風亭) (昭和12年築)
・大阪中央郵便局 (昭和14年築)
・馬場熱海別邸 (昭和15年築)

建築家・吉田鉄郎の『日本の建築』―JAPANISCHE ARCHITEKTUR,1952 (SD選書) 建築家・吉田鉄郎の『日本の住宅』 (SD選書) 建築家・吉田鉄郎の『日本の庭園』 (SD選書) 建築家・吉田鉄郎の手紙 建築家吉田鉄郎とその周辺 (相模選書)

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2008年07月01日(火)22時18分 受信